前回その74で長野県の大姥座像を紹介しましたが、同県には他にも姥神と思われる像がありますので、今回はそれらを紹介します。
・千曲市霊諍山
霊諍山の姥神像
霊諍山にあるマントを着た猫と動物の石像
霊諍山の頂上にある堂
千曲市にある大雲寺、その裏に霊諍山があります。標高490.5メートルの低山ですが、明治時代の中ごろから地域の信仰を集め、以前は「御座たて」と言う神事が行われていたようです。大国主を中心に多くの神々が祀られ、様々な石仏を見ることができます。それらの中には動物やマントを着た猫など、面白いものもあります。そのひとつに奪衣婆とされていますが、閻魔はありませんので、姥神と思われる像もあります。他の石仏と並べてありますが、頂上の堂の前、参道途中にありますので、境界―姥神型として祀られていると考えることができます。
・佐久市姥堂
佐久市姥堂の姥神像1体目
佐久市姥堂の姥神像2体目
佐久市姥堂の説明書き
佐久市に姥堂あり、その中に2体の姥神像があります。説明書きでは年老いた女性を表す“嫗”の字が使われていますが、内容は奪衣婆のことを説明しています。片方、磨耗が少なく、おそらく新しく作成されたものは、延宝元(1673)年と彫られています。もう片方はそれより古いと考えられますので、江戸時代初期よりさらに以前からこの地域にあったのではないかと推測できます。もともとは野ざらしになっていたようですので、路傍などに置かれていた可能性もあり、境界の意味があったのかもしれませんが、現在は堂の中にあるため、本尊―姥神型として祀られていると言えます。
・岡谷市日吉神社
岡谷市日吉神社の入口にある姥神像
岡谷市の諏訪湖の釜口水門近くに日吉神社があり、その参道入口にしょうずか婆さんの石像として姥神像が置かれています。しょうずか婆さんは奪衣婆のことですので、奪衣婆像として認知されているようです。伝承によると、この像は元禄5(1692)年に伝十郎夫妻のために造られたとされます。
当時村長だった伝十郎の家が火事になり、村の重要書類を燃やしてしまいました。その責任を感じ、妻とともに西国巡礼に旅立ち、消息を絶ってしまったそうです。そのため村人は伝十郎夫妻があの世の三途の川で衣服が取られないよう願うため、この像を建立し祈ったとされます。
伝承のなかで三途の川のほとりで亡者の衣服を剥ぎ取るとされる奪衣婆として伝えられていますが、冥福を祈る場合、通常は閻魔様や地蔵尊を祀りますので、この伝承は後から作られたものではないでしょうか。
この像の近くに閻魔像はなく、参道入口にありますので、もともとは境界-姥神型として祀られた姥神像だったのではないかと考えられます。
次回に続く・・・
寄稿文
廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家
※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
発行元責任者 鎹八咫烏(ZIPANG TOKIO 2020 編集局)
アーカイブ リンク記事をご覧ください。
千曲川の源流を育む甲斐・武蔵・信濃
ユネスコエコパークは、これまで地域で行われていた自然環境の保全活動等が国際的に認められてユネスコに登録される制度です。
いま行っている活動を継続し、発展させていくことが、ユネスコエコパークの活動に繋がっていきます。従って、登録によって劇的に何かが変わるということはありませんが、少しずつ将来を見据えた持続可能な発展を目指す環境が構築されていきます。
また、既に地域で適用されている法律や条例、各自治体の計画等により自然環境の保護を担保する制度ですので、新たな規制が発生することはなく、これまで可能であったことがユネスコエコパークの登録によって出来なくなることはありません。
地元のみなさんの活動も、そこに留まらず、日本国内にあるユネスコエコパーク、更にはユネスコを通じて世界のユネスコエコパークへ発信され、活動は繋がり、広がっていきます。 これまで行ってきた活動が、地域へ、日本へ、世界へ貢献する活動となっていく可能性を秘めています。
国内ユネスコエコパーク参考事例
「白山ユネスコエコパーク」10エリア
白山ユネスコエコパークは、北緯約36度・東経約137度、日本列島の概ね中央に位置しています。
エリアの中心には百名山/標高2,702mの白山があり、白山頂周辺の高山帯や亜高山帯を核心地域に、それを取り囲む広大なブナ林を緩衝地域に、その周りに広がる山村を移行地域に設定しています。
エリアは、4つの県と7つの市村にまたがっています。
・ 富山県/南砺市 ・ 石川県/白山市 ・ 福井県/大野市・勝山市 ・ 岐阜県/高山市・郡上市
・白川村
(詳細・画像は下記のURLからご覧ください。)
ZIPANG TOKIO 2020「千曲川の源流を育む甲斐・武蔵・信濃の三国にまたがる甲武信ヶ岳、甲武信ユネスコエコパーク登録推薦決まる(埼玉県、東京都、山梨県、長野県)」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/3822129
山峡の栄村秋山郷の大自然
先人の知恵と技を受け継いだ独特の文化が息づく
長野県の最北端に位置する栄村は、人口約2500人。山々に囲まれたこの地域は積雪量が日本一(7m85cm)を記録したこともある日本有数の豪雪地です。
村の北部を流れる千曲川沿いの野々海高原や温泉施設には、グリーンシーズンになるとアウトドアを楽しむ人たちの姿が見られます。また、村の南部にそびえる苗場山、鳥甲山には大勢の登山愛好家が訪れます。
この両山に挟まれた細長い山峡「秋山郷」は江戸時代の文人鈴木牧之の著した「秋山紀行」で初めて世に紹介されました。いまでも先人の知恵と技を受け継いだ独特の文化が根強く残っており、村の随所で歴史の重みが感じられます。
秋山郷について
秋山郷(あきやまごう)は、苗場山と鳥甲山に挟まれた細長い道筋、国道405号沿いに点在する12の集落の総称です。
秋山郷を訪れるには、無雪期(6月から11月上旬)では、津南町方面から入るルートと志賀高原(野沢温泉)方面から入るルートがあります。
有雪期(11月中旬から5月末)には、山岳地帯は雪で交通が遮断されるため、津南方面からのみのルートに限定されます。また、志賀高原ルートは公共交通機関がないため、自家用車などの車(大型バスは不可)での移動に限定されます。
津南町~ルートは津南・和山に路線バスがあるため、これらの利用が可能です。ただし、本数が少ないため、秋山郷内での観光は限定的になります。
なお、秋山郷の見どころを一通り堪能するためには、最低でも1泊2日の滞在を想定されることをお勧めします。
栄村観光協会推薦の「秋山郷満喫コース」を紹介いたします。参考にしてください。
(詳細・画像は下記のURLからご覧ください。)
ZIPANG TOKIO 2020「山峡の栄村秋山郷の大自然 先人の知恵と技を受け継いだ独特の文化が息づく」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/3926109
隠岐ユネスコ世界ジオパークの概要
隠岐ユネスコ世界ジオパークの範囲
隠岐ユネスコ世界ジオパークは、島根半島の北40~80kmの日本海に点在する4つの有人島と多数の無人島によって構成されており、下記に示す境界線の内側をその範囲としています。 離島という環境と海洋生物や漁業などの人の営みも重要であると考え、陸域だけではなく海岸から1kmの海域もあわせた673.5km²(陸域346.0km²、海域327.5km²)をジオパークの範囲としています。
隠岐ユネスコ世界ジオパークの特徴
隠岐諸島は、時代によってその姿を“七変化”させてきた歴史があります。
ユーラシア大陸と一体だった時代、湖の底だった時代、深い海底にあった時代、火山活動によって隆起した時代、そして島根半島と陸続きになった時代、離島となった現在。
このような成り立ちを経たからこそ、世界的に見ても珍しい不思議な生態系や黒曜石による隠岐ならではの歴史・文化が、連続性を持って存在しているのです。
島根半島から分離して離島となったのではなく、海面の上下によって隠岐は島根半島と陸続きになったり離島になったりを繰り返しています。
隠岐と島根半島の間の水深が約70mなので、2万年前の氷河期には現在より海面が130mほど下がるので陸続きとなります。その後の地球の温暖化による海面の上昇によって約1万年前に現在のような離島となったのです。
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