開催期間:2025年3月20日(木・祝)〜2025年6月15日(日)
町田市立国際版画美術館(東京都町田市原町田4-28-1)は、2025年3月20日(木・祝)から6月15日(日)まで「日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る」展を開催します。
歌川広重「東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」天保4-5年(1833-34)頃 大判錦絵[前期]
展覧会概要
版画が織り成した文化交流の物語とは―
「日本らしさ」とは、何を指すのでしょうか。
たとえば日本が世界に誇る浮世絵は、実は中国や西洋の表現手法を取り入れつつ百花繚乱の世界を開かせました。歴史を紐解いていくと、「日本らしさ」の奥には多様な文化的背景をもつ作品や人との交わりを見つけることができるのです。
本展では、日本現存最古の印刷物である無垢浄光大陀羅尼経むくじょうこうだいだらにきょうから、仏教版画、絵手本や画譜、浮世絵、創作版画、新版画、戦後版画、現代版画へと連なる約240点を当館収蔵品から厳選して紹介。
特に他の東アジアの国々とのつながりにも注目し、文化交流の視点で日本の版画1200年の歴史を辿ります。
私たちが「伝統」、そして「芸術」として考える版画はどのように生まれ、どこへ向かうのでしょうか。この春、「日本の版画」1200年の旅に出かけませんか。
展示構成
1. 版と祈りー日本版画のあけぼの
奈良時代の天平宝字8年(764)、称徳天皇は諸寺に《百万塔》を安置しました。その内部に納められたのが、現存日本最古の印刷物とされる《無垢浄光大陀羅尼経》です。平安時代になると、木版画の制作が活発になり、主として仏像内部に納められるために印仏や摺仏が制作されました。南北朝時代に至ると、仏教版画は大型化し、版で摺られた上から手で彩色され、礼拝の対象として祀られるようになります。
主な出品作品
《無垢浄光大陀羅尼経》 奈良時代(767-769頃)[前期]
《十二天像(与田寺版)のうち梵天》 室町時代 木版手彩色[後期]
2. 出版文化の隆盛―拡散するイメージとその受容
16世紀から、イエズス会士はキリスト教布教のために中国へ渡り、西洋の文物を伝えました。《康熙帝御製耕織図》では西洋画から学んだ透視図法が用いられる一方、《蘇州景 新造萬年橋》には西洋画を消化した独自の遠近表現が見られます。また中国では画譜出版文化が隆盛を迎えており、日本でも舶来の画譜を基にした独自の版本が次々に制作されました。本章では狩野派や南蘋派の画譜も紹介します。
主な出品作品
《円窓の二美人》清時代(18世紀頃) 木版手彩色[後期]
王概(編)『芥子園画伝』(和刻) 宝暦3年(1753) 木版多色摺
3. 変わり続ける浮世絵―舶来文化の吸収と再創造
舶来文化の影響を受け、日本の版画は浮世絵の世界で千変万化の様相を呈します。19世紀、葛飾北斎や歌川広重は浮絵の手法を発展させ、浮世絵風景画という新ジャンルを確立しますが、その淵源には蘇州版画や西洋画があるといわれています。さらに明治期の小林清親による「光線画」は、西洋画をヒントに夕日や灯火といった繊細な光の微妙なうつろいを描き、変わりゆく新都会東京に生きる人々を郷愁へと誘いました。
主な出品作品
葛飾北斎「冨嶽三十六景 遠江山中」天保2年(1831)頃 横大判錦絵[後期]
歌川広重「東海道五拾三次之内 箱根 湖水図」天保4-5年(1833-34)頃 横大判錦絵[前期]
4. 創作版画と新版画―両洋の眼・浮世絵の超克
明治30年代、「自画・自刻・自摺」を理想としてかかげた「創作版画」が登場します。本章で取り上げる戸張孤雁や織田一磨などは、創作版画家の中でも特に浮世絵の伝統を重んじて制作をおこないました。この一方、大正期初めに浮世絵版画の出版体制を継承する「新版画」が渡邊庄三郎によって創始されます。両者は西洋美術に刺激を受け、浮世絵版画を超克する近代日本版画となるのでした。
主な出品作品
小早川清《近代時世粧 瞳》1930年 木版
川瀬巴水《霧之朝(四谷見附)》1932年 木版
5. 版画誌がつなぐネットワーク―日本と中国の「創作版画」
創作版画運動が盛り上がると、1920年代から日本各地で版画家のグループが結成され、版画誌が隆盛します。日本留学中にこの動きを知った魯迅は、中国の創作版画ともいえる「新興版画」を提唱しました。
版画家・編集者の料治熊太が主宰した創作版画誌『白と黒』や『版藝術』には、中国・広州の若者が1934年に結成した「現代創作版画研究会(現代版画会)」に作品を寄せ、日中版画交流の舞台になりました。しかし1937年に日中が本格的な戦争状態に突入すると、中国の作家は抗日や政治的主題を描く木刻運動に身を投じ、両国の版画交流は途絶えざるをえませんでした。
主な出品作品
編集:料治熊太『版藝術』〈勝平得之版画集 全国郷土玩具集の[九] 秋田郷土玩具集〉1935年9月 木版
編集:料治熊太『版藝術』〈現代創作版画研究会(中華民国版画集) 南中国郷土玩具集〉1936年1月 木版
6. 占領下における新しい版画の胎動―中央と地方、モダニズムとリアリズムの往還
1945年の敗戦後、海外との交流をきっかけに新しい版画が生み出され始めました。本章では恩地孝四郎を慕う版画家が集った「一木会」と、山形県南村山郡山元村にあった山元中学校(通称「山びこ学校」)に注目します。
前者はアメリカ進駐軍関係者との交流を経て抽象作品を育み、後者は中国木刻が紹介されたことをきっかけに、生活綴り方を版画に応用させました。
2つの動きは戦後の教育版画運動のなかで合流し、1960年代から小中学校教育で版画が取り入れられることにつながっていきます。
主な出品作品
恩地孝四郎《リリックNo.9 はるかな希い》1950年 木版
山形県南村山郡山元村山元中学校『炭焼きものがたり』1951年 木版
7. 「国際版画展」の季節―「版画の国」を広め育てる
冷戦期は各国が文化政策の一環として国際展を開催し、日本も国際文化交流に力をいれました。なかでも棟方志功が1956年ヴェネツィアビエンナーレで受賞したことは、「版画の国」としての日本の存在を内外に示しました。さらに欧米を中心に各国で国際版画展が創設されると、1957年には東京国際版画ビエンナーレが始まりました。
国際的に活躍する土台が整ったことで、日本の版画家は政治体制をこえ様々な国で受賞を重ねました。1970年代から美術大学に版画コースが設立されると、国際版画展受賞者が教鞭を執っていきます。小学校から大学まで幅広い場で版画を学ぶ環境が整ったことが、日本が版画大国となる礎を築きました。
主な出品作品
棟方志功《二菩薩釈迦十大弟子 富樓那の柵》1939年 木版[前期]
靉嘔《レインボー北斎 ポジションA》1970年 スクリーンプリント
開催概要
会期
2025年3月20日(木・祝)〜2025年6月15日(日)
*5月8日(木)から後期展示
会場 町田市立国際版画美術館
住所 194-0013 東京都町田市原町田4-28-1 Google Map
展示室 町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2 ※巡回なし
時間
平日:10:00~17:00
土・日・祝日:10:00~17:30 ※入場は閉館30分前まで
休館日
月曜日
※5月5日(月・祝)、6日(火・振替休日)は開館し、7日(水)は休館
観覧料
一般 800(600)円 大・高生 400(300)円 中学生以下は無料
※( )は20名以上の団体料金
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は半額
※初日3月20日(木・祝)は入場無料
※開館記念日4月19日(土)は入場無料
※会期中の第4水曜日のシルバーデー(3月26日、4月23日、5月28日)は65歳以上の方の入場無料
※リピーター割引、ウェブクーポン割引ほか各種割引を実施(※詳細は当館Webサイトに掲載予定)
お問い合わせ TEL 042-726-2771
主催 町田市立国際版画美術館
関連イベント
※イベント 1〜3 は、町田市イベント申込システム「イベシス」HPあるいはイベントダイヤルでの事前申込が必要です。
1. 記念講演会
5月18日(日) 14:00~15:30
講師:山口晃氏(画家)
会場:講堂
定員:120名(申込順)
申込期間:2025年3月26日(水)正午より (イベントコード:250326A)
*定員に達し次第締め切ります。
*本展観覧券(半券可)をご用意ください
作品制作にとどまらず、著書『ヘンな日本美術史』では独自の観点から日本美術史を論じてきた山口晃氏。実作者の立場からみた日本の版画の魅力を語っていただきます。
2. 0歳からの版画美術館!親子で鑑賞&版画あそび
4月16日(水) 10:15~11:45 対象:0歳~未就学児童とその保護者
5月17日(土) 10:15~11:45 対象:0歳~小学2年生とその保護者
講師:冨田めぐみ氏(NPO法人赤ちゃんからのアートフレンドシップ協会代表理事)
会場:講堂、企画展示室
定員:各回10組(申込順)
申込期間:3月25日(火)正午より(イベントコード: 250325A)
展示室での鑑賞と、お家で応用できる版画あそびが体験できます。
*定員に達し次第締め切ります。
*保護者の方は当日有効観覧券をご用意ください(お子様は参加無料)
*対象学年を超えるお子さんの参加については申込時にご相談ください
3. 子ども講座―みてみてつくろう―
3月29日(土)13時30分~16時
対象:小学3~6年生
講師:杉浦幸子氏(武蔵野美術大学芸術文化学科教授)
会場:講堂、企画展示室
定員:16名(抽選)
受講料:1,000円(材料費込)
申込期間:2月13日正午より(イベントコード: 250213A)
展覧会を鑑賞し、出品作品にちなんだテーマで小さな作品を制作します。
4. 復刻浮世絵版木摺り体験2025
5月24日(土) ①13:30~ ②14:30~
対象:どなたでも(未就学児は要保護者同伴)
会場:アトリエ
定員:各回10名(当日受付・先着順)
参加費:1人100円
5. 担当学芸員によるギャラリートーク
①1章~3章 仏教版画、浮世絵を中心に 4月5日(土)、5月17日(土)
②3章~5章 新版画、創作版画を中心に 3月23日(日)
③5章~7章 創作版画、戦後・現代版画を中心に 3月30日(日)、5月3日(土)
各日14:00から30分程度
担当:①宮﨑黎 ②滝沢恭司 ③町村悠香
会場:企画展示室1
*本展当日有効観覧券をご用意ください。
6. プロムナードコンサート
6月14日(土) 第1部:13:00~ 第2部:15:00~(各回30分程度)
演奏:第1部 玉川大学芸術学部音楽学科
第2部 桜美林大学芸術文化学群音楽専修
会場:エントランスホール
*鑑賞無料
同時開催
特集展示「ふぞろいの版画たち―西洋版画のシリーズとステート」
2025年3月14日(金)~6月15日(日) 常設展示室 入場無料
鎹八咫烏 記
石川県 いしかわ観光特使
伊勢「斎宮」明和町観光大使
協力(敬称略)
紅山子(こうざんし)
※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
アーカイブ リンク記事をご覧ください。
萬陽工房に、芸術家(版画家)池田満寿夫氏を訪ねて
池田満寿夫氏と「名古屋国際デザイン博覧会記念 児童画コンテスト」企画打ち合わせの様子
(熱海市・萬陽工房にて)
池田満寿夫画伯 曰く
今、学校の工作・美術の時間では絵も描くし、粘土細工も作るし、彫刻も版画もする。これは良い事です。でも時間があれば、それらのことをするのにに使われる道具についても、しっかりと教えるべきだと想います。
よく言われるように今の子供たちは鉛筆が削れない。ナイフが使えない、ノコギリが曳けない。手先の器用さがどんどん失われている。
反対にファミコンのボタンやパソコンのキーを叩くのは天才的だけど。
昔のように手全部、身体全体を使っていた作業が指先だけで出来てしまう。
人間らしさの喪失というか、失ったものの大きさを感じますね。
だけど、社会全体の動きは、指先だけで済む社会へ移行しようとしている。
この中で、すくなくても芸術はしっかりと人間らしさを求めていきたいものです。
芸術とは本来、人間の生活に密着したものですから、大人は「芸術など無駄なものだ」
なんて考えないでほしいし、子供たちは「美術の時間は遊べるからいい」なんて思わないでほしいですね。
(天の声:何やカビの生えたこまい写真持ち出してきおって、いよいよネタ切れかいな🌚)
これかいな発酵してんねん!ほんまの発酵写真や…良い味だしてるんやけんど、どや⁈
かなんな~、ほんま言うたら、アラ見えんように小そう小そうしてまんねん😓
(天の声:ほう~そうかいな、これも芸のうちやてか⁉)
2023年4月1日より
~熱海市の6文化施設の包括的指定管理を共同事業体として実施~
株式会社ジェイアール東日本企画(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:赤石 良治、以下、jeki)および特定非営利活動法人あたみオアシス21(静岡県熱海市、理事:中島美江、以下オアシス21)からなる共同事業体「熱海市文化施設運営委員会」は、熱海市から熱海市文化施設指定管理者の指定の決定を受け、2023年4月1日(土)より各文化施設の特性を生かした運営管理を行い、熱海市の重要な歴史・文化の振興を図りながら、これらの施設を基軸とした地域観光活性化に資する様々な事業の実施を行う。
■対象文化施設
1.熱海市澤田政廣記念美術館
所在地:静岡県熱海市梅園町9番46号
2.熱海市起雲閣
所在地:静岡県熱海市昭和町4番2号
3.熱海市立伊豆山郷土資料館
所在地:静岡県熱海市伊豆山708番2号 伊豆山神社境内
4.熱海市凌寒荘
所在地:静岡県熱海市西山町12番18号
5.熱海市池田満寿夫・佐藤陽子 創作の家
所在地:静岡県熱海市海光町10番24号
6.熱海市池田満寿夫記念館
所在地:静岡県熱海市下多賀1130番1号
池田満寿夫画伯の想い出
熱海市のご自宅に併設したアトリエにて
新幹線が熱海に近づく「今日は富士山が格別美しくご覧になれます。」ーーーーー
珍しい車内アナウンス。車窓から見える富士山は、確かに美しく凛とし、誇らしげな雄姿である。
池田満寿夫氏を熱海のアトリエに訪れた某日。この日は、大気は澱むことなく輝き、空は抜けるように高く、海はあくまで青く澄んでいた、今日のこの青い海なら、ニコスの死を静かに包むように見ていた、あのエーゲ海に負けないかもしれない。
版画家、画家、小説家、芥川賞作家、映画監督、脚本家、写楽研究家、エッセイスト、そして陶芸家・・・
池田氏にはどの肩書も正しく、どれも相応しくない。
あらゆる芸術家というカテゴリーを破り続けている池田満寿夫氏を尋ねました。
(詳細・画像は下記のURLからご覧ください。)
ZIPANG-7 TOKIO 2020池田満寿夫・佐藤陽子創作の家を始め、熱海市文化6施設の指定管理事業を開始!【jeki】
https://tokyo2020-7.themedia.jp/posts/42441713
津軽デジタル風土記 ~ 北斎 と ねぷたまつり
ZIPANG-5 TOKIO 2020 古今折衷 津軽デジタル風土記 ~ 北斎 と ねぷたまつり ~(一)
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/17253889
ZIPANG-5 TOKIO 2020 古今折衷 津軽デジタル風土記 ー ねぷたまつりと北斎 ー その邂逅への経緯 (二)
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/17336141
ZIPANG-5 TOKIO 2020 古今折衷「津軽デジタル風土記」 〜 新形式で後世に残すねぷた絵DNAの継承~(三)
https://tokyo2020-5.themedia.jp/posts/17397380
お問合わせ
弘前大学 瀧本壽史
MAIL:htakimoto@hirosaki-u.ac.jp
編集後記に代えて
当Webサイトにおける「津軽デジタル風土記」につきましては、ひとまず本号にて完結となります。沢山の貴重な資料をご提供戴いたにも拘わらず、一つのテーマをご紹介するのがやっとのことでした。
読者の皆様におかれましては、かなりの長文となり、さぞかしお疲れのことと存じます。
編集担当としては力不足で残念でなりませんが、「津軽デジタル風土記の構築」プロジェクトの成果が、古典籍・歴史資料デジタル化の未来への魁となられ、益々ご発展される事を願っております。ご協力ありがとうございました。
ZIPANG TOKIO 2020「【 弘前ねぷたまつり 】 ねぷた囃子が、ねぷたに魂を与え、津軽人の血を奮い立たせる」
https://tokyo2020-summer.themedia.jp/posts/2606156
青森ねぶたに影響を与えた!~歌川国芳~
倉敷美観地区から浮世絵の魅力を世界に向けて発信するプロジェクト「UKIYO-E KURASHIKI」は、第1弾として、倉敷美観地区を一望できる旅館を再生し、世界初となる歌川国芳のミュージアム「UKIYO-E KURASHIKI/国芳館」を2021年3月31日に開館した。
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