2025年9月
国境なき医師団 現地報告
北部ガザ市の診療所からテントなどの物資をトラックに積み込むスタッフ © MSF
パレスチナ・ガザ地区北部ガザ市におけるイスラエル軍の攻撃激化を受け、国境なき医師団(MSF)は、ガザ市での医療援助活動の一時停止を余儀なくされた。継続的な空爆に加え、戦車が医療施設から1キロ未満に迫るなど、治安状況は急速に悪化している。攻撃激化によりスタッフが活動を継続できないレベルの危険に達し、救命医療活動の継続が困難となった。北部で保健省が運営する病院への支援や、中部・南部での活動は継続する。
MSFは、暴力の即時停止と民間人の保護を強く求める。イスラエル当局は、ガザ市で人道援助団体が妨げなく安全に活動できる環境を今すぐ整えなければならない。
膨大な医療ニーズの中での活動停止
ガザで緊急対応コーディネーターを務めるジェイコブ・グレンジャーはこう話す。
「診療所がイスラエル軍に包囲され、活動の停止という苦渋の選択をせざるを得ませんでした。ガザ市では、新生児ケアが必要な乳児、重傷を負った人、命に関わる病状の人など、最も弱い立場に置かれた人たちが移動できず、深刻な危険に晒されています。ガザ市の医療ニーズは膨大で、活動の停止は最も避けたかった事態です」
イスラエル軍が出す退避要求により多くの住民が南部への移動を余儀なくされた一方で、ガザ市には依然として数十万人が残っている。移動する手段がなく、留まる以外に選択肢がない人びとだ。移動できる人びとにとっても、激しい攻撃と退避要求が続くガザ市に留まるか、家や家財、思い出を捨てて人道状況が急速に崩壊している地域へ移動するかという、困難な選択を迫られている。
現在ガザ地区全体でかろうじて部分的に機能している病院は、スタッフ、医療物資、燃料の深刻な不足により限界に達している。人びとは医療を受けるために多くの困難に直面しており、医療施設への到着が遅れて重篤な状態に陥るケースがたびたび起こっている。
MSFは、ガザ市内の診療所において先週だけでも3640件以上の診療を行い、栄養失調の患者1655人を治療した。深刻な外傷や熱傷を負った人、妊娠中の女性、継続的な治療を必要とするが市外へ出られない人びとへの治療も行った。これらの数字は、医療ニーズが非常に高いことを示している。MSFはガザ市での活動停止を余儀なくされたが、アル・ヘロウ病院やシファ病院など保健省の医療施設が稼働する限り、そこでの主要サービスの支援を継続する方針だ。
無人となったガザ市の診療所の処置室 © MSF
暴力の即時停止と民間人の保護、妨げのない人道援助を
安全な飲料水、食料、避難所、医療へのアクセスとそれらの提供は、ますます制限されている。ガザ市民は繰り返される執拗な爆撃に晒され、疲弊し、生きるために必要な物資を意図的に奪われている。
MSFは、暴力の即時停止と、民間人を守るための具体的な行動を強く求める。イスラエル当局は、ガザ市で活動する人道援助団体が妨げなく安全に活動できるようにし、医療や人道援助を安定して届けられる環境をすぐに整えなければならない。現在、その環境が整っていないことは明らかだ。
MSFはガザ南部と中部での医療活動は継続する。南部のハンユニスではナセル病院を支援するとともに、3つの基礎診療所を運営している。中部では、アル・アクサ病院の救急部門と外傷治療を支援するとともに、デールバラハで2つの仮設病院を運営している。
参考
2025年1月21日 惨状
激しく破壊されたガザ地区ラファの街 © MSF
国境なき医師団とは
世界中、医療が届かない人びとのもとへ駆け付ける
国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF)は、民間で非営利の医療・人道援助団体です。紛争や自然災害、貧困などにより危機に直面する人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けています。
医療援助と同時に、現地で目の当たりにした人道危機を社会に訴える「証言活動」も国境なき医師団の使命です。
1971年にフランスで設立し、1999年には活動の実績が認められ
ノーベル平和賞を受賞しました。
鎹八咫烏 記
石川県 いしかわ観光特使
伊勢「斎宮」明和町観光大使
協力(順不同・敬称略)
国境なき医師団(Médecins Sans Frontières=MSF)
紅山子(こうざんし)
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アーカイブ リンク記事をご覧ください。
国境なき医師団
世界中で命を守るために活動する、
医療・人道援助団体です
レンクの一時滞在センターの給水所に並ぶ人びと=2023年9月15日 © Evani Debone/MSF
国境なき医師団(MSF)は、世界75の国と地域で活動する、民間で非営利の医療・人道援助団体です。紛争や自然災害、貧困などにより危機に瀕した人びとに、独立・中立・公平な立場で緊急医療援助を届けています。
活動実績が認められ、1999年にノーベル平和賞を受賞しました。
今年4月にスーダンで戦闘が始まって以降、約29万人が隣国の南スーダンへと逃れたが、その9割はスーダンから帰還した南スーダン人(以下、帰還民)が占めている。
(詳細・画像は下記のURLからご覧ください。)
ZIPANG-7 TOKIO 2020南スーダン:スーダンからの帰還民に増える感染症と栄養失調──医療援助の拡大が急務【国境なき医師団】
https://tokyo2020-7.themedia.jp/posts/48335123/
水を紛争の武器にしてはならない
ジェノサイド(集団殺害)
パレスチナ・ガザ地区で、イスラエルが人びとから意図的に水を奪っている。これは、パレスチナ人から食料や水、医療など命の維持に必要な物資を奪うジェノサイド(集団殺害)の一部だ。
イスラエルが1年10カ月にわたって水インフラの破壊と利用制限を続けてきた結果、ガザで利用できる水の量は極めて不十分な状態にある。MSFなどの援助団体には安全な水の供給を増やす力があるにも関わらず、イスラエルは水処理に不可欠な資材の搬入を阻止している。2024年6月以降、MSFが提出した海水淡水化装置の搬入申請10件のうち、承認されたのはわずか1件のみだった。
イスラエルは、給水に不可欠な機器の搬入を大規模に許可する必要がある。命を維持するための水を確保できるよう、イスラエル軍は水インフラの破壊をやめ、被害を受けた水システムの即時修復を許可しなければならない。 水などの生活必需品を、紛争の武器にしてはならない。
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